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異世界コンビニ 第五話

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第5話:恋の火花と、爆発寸前の心

あれから数日。
アレンは毎日来て、浅漬けだけでなく
おにぎりや唐揚げにも手を出し始めた。

「まどかのオススメは全部うまいな!」

そんなこと言われたら、
好きになっちゃうじゃんもう。

そこへ、扉が静かに開く。

「……やぁ、運命の人」

黒いローブ姿。セドリック登場。
私の心臓も登場(バクバクと)。

アレンが剣をギラッとさせる。

「おい魔法メガネ!今日は何しに来た!」

「決まってる。デートの下見だ」

「勝手に計画すんなぁぁ!」

二人の視線がぶつかる。
ギラギラ……バチバチ……
レジの蛍光灯がチカチカしてるのは多分気のせいじゃない。

「まどかは俺と浅漬けデートだ!」
「浅漬けでロマンを語るな。
まどかには花束と星空が似合う」

(似合わないけど似合いたいから黙る)

アレンが勢いよく指差す。

「お前なんて!どうせまどかの好みじゃねーんだよ!」

「では聞こう。まどか、
君はどんな男が好みなんだ?」

……え?急に本人に振ります?

二人に見つめられて、頭が真っ白になる。
正直に言うなら——

(アレンの明るさも、セドリックの真剣さも、両方すき…かも)

でも口から出たのは、

「え、えっと……買い物をちゃんとする人かな~って……」

アレン
「じゃあ毎日浅漬け買ってる俺勝ち!」

セドリック
「毎日花を贈ろう」

「勝ち方の方向性違う!」

と、外からドタドタと足音。
定番の敵軍が現れた。

「きゅうり返せー!!」
「またおまえらか!!」

しかし今日は数が多い。
スライム3体、オーク2体、そして新顔のデカコウモリ。

アレンが剣を構える。

「まどか!今日の武器は!?」

「えーっと……チョコまん?」

「甘い…!でも行く!!」

セドリックも背後に回り、魔法陣展開。

「まどか、後ろに。必ず守る」

(こんなん惚れるしかないやん)

敵が突っ込む!

アレン
「甘味パワー!!チョコの恵みを喰らえぇぇ!」

スライム
「溶けるぅぅぅ!甘いぃぃ!!」

セドリック
「カプサイシン・ラブリーシャワー」

オーク
「辛っ!でもうまっ!でも辛っっ!!」

なんだこの戦場。
美味しいものをぶつけあう戦争やめよう。

私は何もできず、ただ二人を見ていた。
胸が苦しい。

(怖い…じゃなくて——)

(アレンやセドリックが、傷つくのが嫌だ)

気づいたら叫んでいた。

「やめて!危ないことしないで!!」

戦いが止まる。
二人が振り返る。

アレン
「……まどか?」

セドリック
「心配してくれたのか?」

私は顔が熱くて、下を向いた。

「だって……二人とも、私に優しくしてくれて……
どっちも大事だから……!」

シーン……
敵まで黙るな。

アレンは照れたように笑う。

「まどか…そんなこと言われたら、
もっと守りたくなっちゃうだろ」

セドリックは真剣な眼差しで言う。

「大切にしたいと思う気持ちに、
優劣なんてない」

その言葉で、私の胸がきゅっと締め付けられる。

敵がそっと逃げていった。
空気読んだ?ありがとう敵。

風鈴が鳴る。
心の音を誤魔化すように。


バトルが終わっても、
二人の視線はまだ熱い。

アレン
「次は俺とデートな!先約だから!」

セドリック
「ではその次は俺だ。順番は守る主義だ」

(え、デート確定してるの?)

突然すぎて、心臓が忙しすぎる。
だけど——

(……嬉しいって思ってる)

異世界コンビニの夜はまだ続く。
私の恋も、どこかへ向かって動き出している。

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