第4話:魔法使い、恋に落ちる音がした
昼下がり。
私はレジ前でポテチの袋を積み上げていた。
今日もアレンは来るだろうか……なんて、
考えてしまう自分がちょっと恥ずかしい。
「まどかぁぁぁ!浅漬け補充まだかぁぁぁ!?」
勢いよくドアが開き、金髪勇者見習い登場。
元気なのはいいが限度がある。
「あるから叫ばないで!」
アレンが浅漬けを抱いて幸せそうにしていると——
店の扉が静かに開いた。
黒いローブ。
手には魔導書。
伏せ気味の瞳は深い紫。
アレンとは正反対の、静かな雰囲気。
(……え、なんかすごいイケメン入ってきた)
彼はレジ前まで一直線。
そして、私を見た瞬間。
「ビビッ……!」
え、なんか聞こえた。
「……あなた、運命、です」
え?
しれっと何言ってんのこの人?
アレンが割り込む。
「おい!いきなり何言ってんだあんた!」
「……俺はセドリック。王立魔法学院主席。
そして今、ここで恋に落ちた」
「宣言早っ!?」
私はあわあわする。
「え、あ、その……初めまして!店員の小森まどかです!」
「まどか……いい名前だ。俺の脳に刻んだ」
アレンが睨む。
「お前、何の用だよここに!」
セドリックは真顔で言った。
「恋人を迎えに来た」
「誰がだよ!?」
「彼女だ」
指差されたのは——私。
人生で初めて、指差されて赤面した。
「ち、違います私はただの店員で…!」
セドリック、さらに追撃。
「店員だろうと構わない。
俺は恋に階級をつけない主義だ」
(台詞が王子様みたい……)
アレンが浅漬けを握りしめ叫ぶ。
「ダメだ!まどかは俺のコンビニガールだ!」
「肩書き雑か!」
火花が散る二人。
息が詰まるほどのイケメン同士の対立——
ロマンチックなラブバトルが……
起こる前にまたあいつらが来た。
「きゅうりぃぃ返せぇぇぇ!!」
デカスライム+オーク+コウモリ
今日もセットで襲来。
アレンが剣を抜く。
「くっ!面倒な時に!」
セドリックが一歩前に出た。
「ここは俺が片付ける。
まどかに惚れた者の務めだ」
魔法陣が足元に展開。
手から紫の光が溢れる。
「グラビティ・スパイス!」
「スパイス!?」
次の瞬間——
スライム達に謎の粉が振りかかった。
ジュワァァァァ!!!!
「ぎゃああああ辛っ!辛っ!舌がぁぁぁ!」
敵、涙目で撤退。
まさかの香辛料魔法。
アレンは呆然。
「お前……塩より強ぇじゃねぇか」
「俺は万能だ」
セドリックはくるりと振り返る。
そして、スッと私の手を取った。
「守れた。俺の恋の相手を」
ドキッ。
アレンが慌てて間に入る。
「ちょ、距離ぃぃ!」
セドリックは微笑む。
「まどか。
また来る。
今度はデートの誘いに」
私の心臓、今までで一番忙しい。
アレンは浅漬けを抱きしめながら叫んだ。
「俺もだ!デートする!!浅漬け持って!」
「それはピクニック!」
こうして私の恋は、突然三角どころか
ちょっと変な形に広がった。
異世界コンビニの風鈴は、
今日もチリンと鳴っている。
◆次回予告
アレン VS セドリック
コンビニの中で恋の火花が散りまくる!?
そしてまどか、初めての“ときめき暴走”事件発生——!


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